Deep Impact
音楽全般を扱っています。主に邦楽、洋楽のディスクレビュー。たまに暴走に走ります。
スポンサーサイト
--年 --月 --日 (--) --:-- | 編集
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[Review] Nine Types of Light / TV on the Radio
2011年 05月 07日 (土) 14:00 | 編集

" Nine Types of Light " / TV on the Radio

 5thアルバム。実質的なデビュー作"Desperate Youth, Blood Thirsty Babes"からしてすでに完成されたような音楽性を誇っていたTV オン・ザ・レディオ。すごく簡単に言えば、ロックに黒人的なソウル、グルーヴ感を持ち込み(若しくはその逆)、エレクトロやダブまでもブレンドさせるごった煮サウンドで一気にインディーシーンの最先端へと躍り出た。その佇まいはバンドというよりはむしろ音楽集団といったほうが適切のような緻密さで、リリースされる作品は毎度のこと恐ろしくクオリティが高い。勿論、今作もその例にもれず。前作"Dear Science"では歌とメロディーによって大衆化を図っていたが、それを更に推し進めて洗練と同時に、彼らの特異な部分だけを抽出したような純度の高い音像となっている。1曲目"Second Song"の控えめなイントロから段々と露わになるグルーヴ感とソウルフルな歌声にいきなり持ってかれるが、音がとてもよく整理されていてともすればシンプルにさえ聴こえる。そして特筆すべきは中盤"Killer Crane", "Wil Do"。優しく撫でるようなメロディーの背後で様々な生音や電子音が溶け合い、最早音響空間としか言いようのない圧倒的な音像で恍惚を誘う。なかなかここまでの成熟を見せたインディーバンドも珍しく、悩む00年代バンドにとって試金石なりえるのではないかと。残念ながら今作を最後にベージストのジェラード・スミスが他界してしまったが、このバンドにはこの先へもっと行ってもらいたい。

( 2011 )

[Review] Hot Sauce Committee Pt. 2 / Beastie Boys
2011年 05月 02日 (月) 17:05 | 編集

" Hot Sauce Committee Pt. 2 " / Beastie Boys

 インスト作品"The Mix-Up"を挟み、ラップ・アルバムとしては7年ぶりとなる8thアルバム。いやー相変わらず素晴らしいっす。これほどまでに「相変わらず」という言葉を親しみをもって使える人たちも珍しく、その安心感は例えるなら笑点並み。オールドスクール感満載の"Make Some Noise"からしていかにもという感じだが、その後もスカやエレクトロ、ファンクなど問答無用のパーティー・ミュージックが目白押し。打ち込みと生音を織り交ぜたサウンド・メイキングはやはりセンス抜群だ。他にも初期のハードコア・パンクを思い起こさせる"Lee Majors Come Again"のような場面もあり思わずニヤリ。またラップは3人ともおっさん化したこともあってかなり落ち着いてはいるものの、それが妙な緩さに繋がっていて心地良い。スチャダラパーなどもそうだけど、童心を持ったオトナたちは年をとっても表現が哀しくならないキャラなのが得だよね。あとは気の利いたインストがあれば全体が引き締まって最高だったが、それはまあ前作でやったから無しということで("Multilateral Nuclear Disarmament"もダビーで悪くないんだけどね)。"To The 5 Boroughs"では地元愛からくるシリアスな面も垣間見えていた彼らだったが、今作では「凄いことを楽しそうに、凄くなさそうに見せる」という本分を尽くしている。みんな大好きザ・ビースティーな快作!

( 2011 )

[Review] The Only She Chapters / Prefuse 73
2011年 04月 24日 (日) 23:24 | 編集

" The Only She Chapters " / Prefuse 73

 ワーカホリックに作品をリリースし続けるスコット・ヘレンによる、プレフューズ73名義としては7枚目となるアルバム。本名義を軸として多くの他名義では本流とは違う音世界を拡散してきた彼だが、ここへきて支流でたっぷりと栄養分を蓄えて本流へと繋がってきているのか。前作でも侵食というレベルでそのような兆候は見せていたが、今作は音楽家スコット・ヘレンとしての新たな物語が立ちのぼってくるような新鮮さを感じ取ることが出来る。まずもってプレフューズ73の代名詞とも言われた、ヒップホップにコンピュータで分解/再構築を行うボーカル・チョップの手法がここにはない。というかそもそもビートの主張が鳴りを潜めている。ビートそのものに音楽的な付加価値を見出した稀代のビートメイカーの作品としては驚きの決断だ。それを封印して表される音世界とは、多層的にして深淵なスコット・ヘレン流音響音楽。アコースティック、シンセ、ノイズ、幾重にも重ねられた音のレイヤーが幽玄さを醸しながら、様々な女性ヴォーカルが時に甘美に、時に生命力を感じさせるように響く。女性の肉声と緻密な音像とが完全に混然とはしていない歪なバランスを形成していて、神聖ささえも感じさせるような。"album-as-female"といったコンセプトありきの企画モノだと思ったら大間違い、ここに彼の実験が結実したことを高らかに宣言していたのだった。

( 2011 )

-関連記事-
[Review] Everything She Touched Turned Ampexian / Prefuse 73

[Review] Wasting Light / Foo Fighters
2011年 04月 19日 (火) 00:08 | 編集

" Wasting Light " / Foo Fighters

 近年のポップ・ミュージックにおける特徴の一つとしてヘッドフォン/イヤフォンの装着率の高さがあると思っている。ダブステップ、ニューゲイザー、インディーなんでも良いが、キャリアは浅くともとても良く音を作りこんでいて、外界の音を遮断して聴きたくなるような作品が多い。昨年、一昨年に年間ベストに選んだ作品たちはまさにそういったものが多かった。もちろんそれは工夫を凝らしているという意味では歓迎する動きであって、多分に刺激的だ。だが一方でCDやレコードをプレーヤーに入れて空気を震わせ、それがどんなに悪い音質であっても気分が高揚して止まないといったような経験は減っている。そしてそれには若干の寂寥感を覚える。王道ロックが最早主流でもなく、若いバンドもそれを目指していない昨今のシーンでは仕方のないことなのかもしれないが。・・・もう何が言いたいかはお分かりだろう、今作はそんな時代に敢えてど真ん中を打ち抜くアルバムになっているのである。
 デイヴ・グロールのガレージでレコーディングからミックスまでを行ったというだけあって、初期を髣髴とさせる荒削りなサウンドがのっけから迫る。音圧のあるギターロック、激情とともに咆哮する歌声は眩しいぐらいにストレート。"White Limo"のキレキレっぷりには思わず笑みがこぼれてしまうほど。そしてへヴィー一辺倒ではなくメリハリが効いているのが、今作を更なる高みへと導いている。パット・スメアも加入した盤石なバンド体制、ブッチ・ヴィグのプロデュースなど様々な好条件がそれを後押ししているのだと考えられるが("I Should Have Known"にはクリス・ノヴォセリックが参加していたり!)、中盤の"These Days"以降の流れが素晴らしい。ハードでメロディアス、ひたすらに陽性かつ前のめりなこれぞロックの応酬。その行きつく先は白眉"Walk"、背景を知らなくても感動的な展開に引き込まれてしまうこと必至な重要曲。アンコールに演奏されるような曲になるのではないだろうか。過去最大にバランスが良く引き締まった楽曲が次々と押し寄せる、サイコ―なロック・アルバム。

( 2011 )

[Review] Belong / The Pains Of Being Pure At Heart
2011年 03月 24日 (木) 22:21 | 編集

" Belong " / The Pains Of Being Pure At Heart

 ブルックリンで結成された4人組、ザ・ペインズ・オブ・ビーイング・ピュア・アット・ハートによる2ndアルバム。2009年のデビュー作では新人らしい貧弱でペラペラなサウンドとメロディーだけを武器に、ネオシューゲイザー/インディーロックシーンの新星となった彼ら。それは瞬間風速的な評価になるかと思いきや、着実に成長を見せるものを出してくるとは。
 バック・トゥ・ザ・80's&90's。革新性やバランス感覚は度外視した、突き抜けた懐古趣味がここにはある。まず、人選からしてモロ。プロデューサーにU2やNIN、デペッシュ・モードを手がけたフラッド、そしてミキサーにはマイブラ、ジザメリ、ライドを手がけたアラン・モウルダーを召喚。この二人が手がけた作品にスマッシング・パンプキンズの"Mellon Collie and the Infinite Sadness"があるわけだが、今作の1曲目"BELONG"は絶頂期のパンプキンズのギターサウンドを彷彿とさせる、いやむしろそのまんま再現しているかのよう。それ以降もシューゲイザー、ニューウェイヴ、ネオアコなど既聴感たっぷりのサウンドを展開する。しかしそれが全くもって欠点となっていないのは、その思い切りの良さによってあざとさを回避しているからだろう。前作に比べて遥かに音の分離が進みダイナミックになったサウンドにこの上なく甘酸っぱいメロディーを乗せて駆け抜けていく疾走感には、楽しくも苦かった青春の片鱗をみて痛痒い気持ちになること必至。先に挙がったようなバンドを愛聴する人にはもちろん、スーパーカーやウィーザー初期の煌きから抜け出せない人にオススメの一枚。

( 2011 )

[Review] My Beautiful Dark Twisted Fantasy / Kanye West
2010年 12月 31日 (金) 12:07 | 編集

" My Beautiful Dark Twisted Fantasy " / Kanye West

 5thアルバム。これはヒップホップにおける「サージェント・ペパーズ」となりえるか。その議論すら有効と思えるほど今作は野心に溢れる作品になっている。VMAでのやらかした一件など、色々と物議を醸すことの多い男がその「認められたい、認めさせたい」という自己顕示欲の塊を一気に放出したかのようだ。肥大にして誇大妄想的、いやはや圧倒的なアルバムである。
 一体何から書き始めればよいのか戸惑うのだが、まずその豪華なゲスト陣から始めるにしよう。今作に参加したアーティストはPusha T, Rick Ross, T.I., Drake, Common, Jay-Z, Eminem, Lil Wayne, John Legend, Fergie, Rihanna, Elton John, M.I.A., Seal, Beyoncé Knowles, Kid Cudi, Mos Def, Santigold, Alicia Keysなどなどここには書ききれないぐらい。ジャンルも世代も異なる人選で、今作のありとあらゆるところで楽曲を彩る。しかしゲストに押されるどころか、それを掻き分けて主張をするのが他でもないカニエ・ウェスト。カニエ印のサンプリングセンスがあり("POWER"における"21st Cenruty Man"のあまりの嵌まり具合に舌を巻き、"Blame Game"のAphex Twinには意外性に思わず笑ってしまう)、ストリングスやピアノも効果的に用い、「俺の美しく暗いねじれた幻想」をラップし、また歌う。白眉は"Runaway"。控えめなイントロから始まりカニエの傷心が吐露され、エモーションな瞬間へと昇華されていく名曲だ。
 これだけ言っても、全く言い足りていないという憂慮が拭えない。それほどまでに聴きどころが多い巨大なアルバムだ。それだけに全ての音楽を愛する人に何かしら引っかかるポイントがあるはずで、是非手にとって噛み締めて欲しいと思う。

★★★★☆ ( 2010 )

[Review] Pattern & Grid World / Flying Lotus
2010年 12月 29日 (水) 23:43 | 編集

" Pattern & Grid World " / Flying Lotus

 5年ぶりに開催となるSonarSound Tokyoへの出演も決まった、フライング・ロータス(ということにかこつけて完全に時期はずれな新作をレビューしてみる)。今年発表され話題になった"Cosmogramma"からわずか5か月しか経っていないのにEPをリリース!しかもこれがアウトテイク集じゃないって言うんだから、やはり乗りに乗った男は違うということなんだろうか。ジャケットもなかなかイッちゃっているが、音の方も奇天烈。"Cosmogramma"の延長線上にあるものから、全くの別ベクトルまで多岐に渡り、7曲18分という中で最大限に濃密な空間を創造している。全体としてジャズやヒップホップからの影響よりも、ぶっ飛んだビートとシンセなどの上モノの音像で遊んでいるという印象。しかもすごくクオリティーの高い遊びなのが恐ろしいところ。そのリリースペースの早さ、多彩さは一時期のエイフェックス・ツインを彷彿とさせる。音そのものが放つ狂気と表裏一体の快楽性という点も似ている気がする。世間から雲隠れするところは見習わないで、今後もやり放題な作品を生み出して欲しいなぁ。

( 2010, EP )

- 関連記事 -
・[Review] "Cosmogramma"

[Review] Swanlights / Antony and the Johnsons
2010年 12月 28日 (火) 14:15 | 編集

" Swanlights " / Antony and the Johnsons

 4thアルバム。前作"The Crying Light"からわずか1年と9ヵ月という短いスパンで発表された今作だが、その楽曲の多くが前作と同時期に作られたものだそうだ。確かにそれが納得出来るほど、方法論は前作のそれを踏襲している。ピアノと歌を中心に配置し、ストリングスと控えめなパーカッションで適度に装飾するという手法。あくまでもミニマルに、シンプルに徹することで歌の存在感が浮き彫りになっている。何気なく流していても、ふとした瞬間に耳を奪われてしまうような歌声の磁場は健在で本当に稀有なアーティストであることを実感する。ただ、今作は前作に見られた崇高=手の届かない世俗を超えた存在としての彼だけではなく、別の面を見せているのが特徴的だ。
 別の面とは何かといえば、動や生といった活き活きとした声の表情のことである。それがポップさに繋がるところまでいっているかは分らないが、少からず今作に聴きやすさをもたらしていると言えるだろう。またそれは包容力や慈しみの感情とも言えて、前述した崇高さや孤独さとの揺らぎの中で奥行きや情感の豊かさに繋がっている。中でも白眉がリードシングルにもなっている"Thank You For Your Love"で、この曲の「生きとし生けるものが幸せでありますように」的な強い肯定が前作には無いエモーションを放出する。一方で"Fletta"ではビョークとの2度目の協演を果たし、たった4分半の中で鬼才同士の対決(敢えてこう書く)による緊張感を生み出している。完成度の高かった前作に負けず劣らずの充実作。

★★★★

- 関連記事 -
[Review] " All Days Are Nights: Songs for Lulu " / Rufus Wainwright
[Review] "The Crying Light"

[Review] Pretty Hate Machine: 2010 Remaster / Nine Inch Nails
2010年 12月 07日 (火) 07:08 | 編集

Pretty Hate Machine: 2010 Remaster / Nine Inch Nails

 長年音が貧弱だといわれ続けていたNINの1stアルバムがトレント・レズナー監修の元リマスターされた。ジャケットもスタイリッシュに生まれ変わり、最早新しい作品が生まれたような新鮮さがある。彼のこういうものづくりに対して徹底的に拘る姿勢がすごく好きだ。なんかもうこの時点で感涙もので、買ってないなら迷わず買え!今すぐ注文だ!と言い切って終わらせたいところだが、それだと不誠実なのでもう少し書こう。
 リマスタリングされることによる恩恵として、今まで聴こえずらかったサウンドが明瞭になることは他のアーティストの作品でも証明済みだが今作はそれだけに留まらない。今作ではドラムサウンドとギターサウンドの強靭化もドラスティックに行われており、一聴して変わったと分かるぐらい前のものとは一線を画している。普通リマスター作品と言えば出来るだけオリジナルに忠実にするというところに重きが置かれると思うので、ある意味で豪快なリマスタリングと言えるかもしれない。確かに今作での"Head Like a Hole"や"Terrible Lie"などは現代的で、ライブ盤"And All That Could Have Been"で表されている感触に近い。そういう意味では本来の姿=トレントが望む姿に生まれ変わったということになり、NIN史の中でもかなり重要な出来事だといえるだろう。
 個人的には1stアルバムは前述したサウンドが理由であまり聴いてこなかったのだが、今回のリマスターを機に初めてちゃんと向き合ったという気がする。そして向き合って分かったのが、この時から彼の作るサウンドは緻密でそして独特であったということ。この時点でNINサウンドは既に確立へと向かっていたのだ。

( 2010 , Remaster )

-関連記事-
[Review] The Social Network / Trent Reznor And Atticus Ross
[Review] How to Destroy Angels / How to Destroy Angels
[Review] 鉄男 THE BULLET MAN 完全オリジナル・サウンドトラック盤

[Review] Living Dirt / Tommy Guerrero
2010年 11月 07日 (日) 18:14 | 編集

" Living Dirt " / Tommy Guerrero

 8thアルバム。前作から約一年と随分短い期間でアルバムが届けられた。そして今回のトミー・ゲレロのアルバムはどうも様子が違う。彼の作品を特徴付けてきたギター・サウンドはエフェクトを加えられ、シリアスであった前作の路線よりも遥かに内省的な内容になっている(曲名も"the sorrow of tomorrow"や"the unfuture"などなにやら不穏な雰囲気が)。ブレイク・ビーツやパーカッションが時折生々しく響くものの、全体に感じる印象はアンビエントとでも言えるだろうか。今作がこのような作品になった訳はその制作過程にある。今作の制作期間はたった5日間で、何も決めないで、真っさらの状態でスタジオに入ったという。本人曰く「全部その場でやった(笑)。とにかくスタジオに入ってどうなるか試してみよう、という精神だったんだ」。なるほど確かに、一人スタジオで瞬間のひらめきを手繰ってゆく、パーソナルでピュアな探求が生き生きと鳴る。だが流石様々な形態で、それこそ一人でもステージに立つ人だからこその完成度も併せ持っている。今更ながらストリート云々で語るだけではなく、才能ある音楽家として独立していることを再確認する一枚。いやー、色んな引き出しを持ってるなーこの人は。

★★★★ ( 2010 )

- 関連記事 -
前作"Lifeboats and Follies"レビュー
copyright (C) Deep Impact all rights reserved.
designed by polepole...

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。