2009年
03月
08日
(日)
05:59 |
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" No Line on the Horizon " / U2
12thアルバム。先行シングル"Get On Your Boots"で叩きけるように叫んでいる"Let me
in the sound"という言葉(そしてそれは"FEZ - Being Born"でもこだまする)。アルバムの
中で中間地点という働きをしている、言い換えれば唯一浮いている曲を先行にしたのは、
その言葉を宣言にするためだったと自分は理解した。つまり今作はU2史上何度目かの変革
が起こっていて、サウンド・オリエンテッドな作品だということだ。「ちゃんとしたメロディーを探
しているだけなんだ」と始まった2000年代のU2は、皆の好きなU2を取り戻し、皆が歌って歓
喜できる曲を書き、ロックバンドとして本当に不動の地位に立った。前作の路線を続け、自己
模倣することで十分に活動は続けていけるだろう、というかU2程のキャリアがあれば昔のヒッ
ト曲を歌い続けることでお茶を濁すことが出来るだろう。しかし、U2は変わり続け、終わりなき
旅を続ける、流石だ。
エッジのギターが世界有数の美しい音色を奏で、リズム隊がここぞというところでグルーヴ感
を引っ張っているのは最早当然というか前提として。それに加えて、今作はブライアン・イーノ、
ダニエル・ラノワというU2にとって重要な2大プロデューサーが曲作りの時点で参加している。
そのことが関係しているのか、音がまるで高くそびえる壁のような完成度を誇っている。イーノ
らしい耽美で、大陸的なエレクトロニカの音像が緻密に配置されていてそれが壮大さやを奥行
きを与えるのだ。こうも違和感なく、バンド・サウンドに溶け込ませているのは経験による円熟
でしか成しえないだろう。そして実は一番変わっているんじゃないかと思うのがボノのヴォーカ
ルだ。全体的に抑えた歌い方をしていると言えるが、ここ最近の枯れた良さではなく、非常に
艶やかで伸びのある歌声になっている。また、相反するようだが、同時に熱くもある。顔を真っ
赤にして、血管を浮き出させて歌う、そんなボノも垣間見えたりして、それが今作をロックにして
いる。これほどの音の構造美の中で飛び回る彼は、本当に稀有なヴォーカリストだと思う。
U2らしさとは恐らく人が思うよりも千差万別なのだろう―「ポップな名曲が沢山ある」、「王道」、
「暑苦しい」、「政治的」、「スケールが大きい」、等。様々な理由で、今作がU2らしくないと思う
人も沢山いるに違いない。だが、自分は変わり続ける(とりあえず飛び込んでみようという)精
神、そして音全体から感じるエネルギー、それこそがU2らしさだと思っている。その意味では
今作は待ってましたと言わんばかりの抜群にU2らしいアルバムだし、だからこそ興奮と感動
を隠し切れない。
★★★★★ ( 2009 )
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もしもロックシーンのヒーローを挙げろと言われたら、僕は迷わずにU2を選びます。もっと馬鹿みたくロックンロールしているバンドやエネルギッシュなアーティストは他にもいるんだけど、U2は自分にとって高みに存在...
2009/04/03(金) 21:38:05 | Tokyo Experiment