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Deep Impact
音楽全般を扱っています。主に邦楽、洋楽のディスクレビュー。たまに暴走に走ります。
[Review] Trans-Love Energies / Death In Vegas
2011年 09月 29日 (木) 23:14 | 編集

" Trans-Love Energies " / Death In Vegas

 前作"Satan's Circus"をリリースしてからお金がなくなったとインタビューで発言したり、その後音沙汰がなくなったりとシーンでの存在感を失ったかのようにみえたデス・イン・ヴェガス。しかしそんな彼らが7年ぶりに遂に還ってきた!通算5作目となるアルバム。
 ロック的なダイナミズムとノイズをエレクトロ/テクノに落とし込んでダーティーでサイケな世界観を形作っていた彼ら。その上、ボビーギレスピーやリアム・ギャラガーなどのロックスターも召喚し(特にリアムの楽曲は彼の歌がトラックに嵌っていて白眉だった)、聴きやすさと間口の広さをも持ち合わせたサウンドは今聴いても当時の勢いが伝わってくる。そんな彼らだが前作にてロック色&歌モノを排し、よりミニマルなエレクトロミュージックへと路線を変更。当時あまりにもひっそりとリリースされたため、あまり話題に上がることは無かったと記憶しているがそれでも熱心に聴いている人も見かけないわけではなかった。そして今作。基本的には前作の路線を踏襲している。ギターサウンドがほとんど存在しないのはもちろん、生々しく響いていたドラムサウンドですら鳴りを潜めている。ヴォーカルも復活はしているものの、歌い上げる感じではなくあくまでも効果としてサンプリング的に用いるに留まっているように思える。"Black Hole"や"Coum"などといった楽曲はノイジーであったりダビーだったりで2ndや3rdの匂いを感じ取れるが、全体としては少し激しめのミニマル・テクノといった趣き。コーラスのサイケな感覚やトラック構築の節々にセンスは感じるものの、音の素材自体が特筆するべきものでないのもあって若干肩透かしを食らってしまったかも。私のようにヴァラエティ豊かなサウンドを期待するのではなく、ストイックなエレクトロ・ミュージックが好きな方にこそ気に入られる1枚となるかもしれない。

( 2011 )

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[Review] flumina / fennesz + Sakamoto
2011年 09月 27日 (火) 22:59 | 編集

" flumina " / fennesz + Sakamoto

 クリスチャン・フェネス、坂本龍一による2枚目となるコラボ作。"flumina"は教授が2009年に行ったツアー"ryuichi sakamoto playing the piano 2009"(川口公演に行きました!)にて披露された即興を元に、フェネスが音を足していく形で制作されたそう。前作"cendre"ではフェネスのサウンドを元に教授がピアノを足していたので、逆の制作方法となる。その分前作と比べて、教授のピアノが存分に活かされている。というかフェネスが元の音源を尊重しつつ、絶妙な手腕で調和するノイズやシンセを足していると言ったほうが正しいか(どうしても私はフェネスの方に評価が寄ってしまうのだが、リミックスやコラボにおいて空気感を壊さずにかつ自分の色を出すのはやはり素晴らしい)。この二人のコラボもいよいよ板に付いてきたようで、その調和具合は兄弟、もしくは師弟のよう。互いの音が反発せずに、タイトル通り流れるような自然さでアルバムは進んでいく。
 今作は24曲あって、そのすべてが異なる調(キー)で構成されているらしい。とはいうもののそれを聴き分けられるほどの耳は残念ながら持ち合わせていないので、その点での解説は他の方に任せるとして。いち電子音楽リスナーとしては、今作が持つ優れたアンビエンスに耳を奪われてしまう。全編2時間を超す長い収録時間となっているのだが、電子音と生音が不可分に溶け合った音像に静かに興奮を覚え飽きることはない。柔らかでもあり同時に厳しく突き放すようでもあり、聴き手との距離感の取り方がすごく上手いなぁと(たゆたうようでもあり冷たくもあるようなジャケットが非常に嵌っている)。全体として未完成の完成品といった風情もあり、自分の中でなかなか完結/消化するものではなさそうなので長い付き合いになりそうだ。スピーカーの前で黙って聴くよりは読書や睡眠のお供に適しているのかな。

( 2011 )

- 関連記事 -
・[Review] Seven Stars / Fennesz
[Review] Finest Hour / Submotion Orchestra
2011年 09月 24日 (土) 00:22 | 編集

" Finest Hour " / Submotion Orchestra

 イギリスはリーズで活動をする7人組によるデビューアルバム。「教会で生演奏のダブステップをやってほしい」という依頼を受けたことが結成のきっかけになったというエピソードが特徴的な彼ら。「教会」、「生演奏」、「ダブステップ」、確かに大いに興味をそそられる話ではある。しかし、実際に聴いてみるとそれは単なるツカミであって、本質的にはそれに囚われない幅広い音楽性が展開されているのに気付く。かろうじてダブステップらしさを感じるのは"Always"、"Pop N Lock"ぐらいで(単にテンポが速いだけ?)。全体を通してみれば、ジャズ、ソウルを基調としつつ生音と電子音を組み合わせ都会の夜を演出するようなクールでゆったりとした世界観で覆われている。ピアノ、ストリングス、ホーンなどが効き、Ruby Woodのような退廃と繊細さを持った女性ヴォーカルを配した楽曲群はMassive Attack、Portisheadなどが培ってきたサウンドを想起させるようだ。また"Closer"あたりのMondo Grossoや、よく比較にされるのを目にするThe Cinematic Orchestraなどとも親和性は高い。絶妙に90'sを振り返りつつ、ダウナーになりすぎないある種の軽さをも手にしているバランス感覚に秀でた好盤。とりあえず"All Yours"を聴いてみて、何か感じるのであれば迷わず手にとっても損はしないはず。

( 2011 )

[Review] X X X / L'Arc-en-Ciel
2011年 09月 17日 (土) 18:20 | 編集

" X X X " / L'Arc-en-Ciel

 20周年第二弾となる38thシングル。今回はhyde曲で、タイトル"XXX"は「キスキスキス」と読むそうな。20周年はベスト&ライヴとシングル1枚でお茶を濁すという意見もちらほら見かけたので、こんなに短いスパンで新曲を出してくるとは思わなかった。しかもこんな変化球を。前作"GOOD LUCK MY WAY"で20周年を祝福するようなスタンダードはやったんだから、今度は好きなことやらせろよと言わんばかりに時代錯誤なゴーシャス感を前面に出している。先に公開されているPVでもバブルかっていうぐらいに下世話で観てるこちらが恥ずかしくなるぐらいギラギラ感を漂わせているが、世間とは全く違う方向で進んできたバンドなので何の不思議もない。楽曲は、メタルに影響受けた彼ららしいへヴィなギターとDepeche Modeのような妖艶さを合わせ、ストリングスでいかがわしさをプラスする何とも趣味性の高い曲になっている。この人達の80年代Loveは潔いなぁ。ハッキリ言うとスマートな方法論では全く無く見方によってはかなりダサいのだが、それをポップなメロディーと演奏で押し切ってしまうのがこのバンドのすごいところ。好き勝手やってるおっさん達の和気藹々感が聴き手にも伝わってくる良曲。アルバムはもっと好き勝手やってほしいね。

( 2011 , Single )

-関連記事-
[Review] GOOD LUCK MY WAY / L'Arc-en-Ciel

[Review] Seven Stars / Fennesz
2011年 09月 14日 (水) 22:43 | 編集

" Seven Stars " / Fennesz

 つい先日―といっても1ヶ月経つけど・・・―発売された坂本龍一との共作"flumina"も話題になっているウィーンの電子音楽家、フェネスの最新EP。今作はアナログが先にリリースされ、やっとこさデジタルリリースとなったので聴いてみた(CDリリースも有り)。3年前の前作"Black Sea"ではギターの旋律よりも、アンビエント色を増したサウンドの美しさが強調されていたが基本路線は今作も変わらず。ハッキリとしたメロディーが無いからこそ、ノイズ、生音、アンビエント、その音の重なり合いや繊細な音の一つ一つにしっかりと耳を傾けることが出来る。そしてそれはは途方もなく美しい。最早、荘厳/重厚とすら言える領域に達していて、手法や小手先云々ではなくひたすらに自らの音を求め続けるこれぞフェネスの真骨頂。爪弾かれた生音の響きからすぐさま独自のテクスチャーへ移行する"Liminal"、冒頭から放たれ続ける様々なノイズとかすかに聴こえる(ような)ヴォイス・サンプルが緊張感をもたらす"July"、比較的生音が前面に出て柔らかく、ロマンチックな面を見せるタイトル曲"Seven Stars"など何とも濃密な18分。アルバムを期待して待つ!

( 2011 , EP )


-関連記事-
・[Review] Black Sea / Fennesz

2011年8月の購入記録
2011年 09月 04日 (日) 16:36 | 編集
そういえば忘れてました、8月の購入記録です。今月からすべてダウンロードとなっております。

新作
・" Drums Between The Bells " / Brian Eno

旧作
・" CERULEAN " / Baths
・" Kurr " / Amiina

3点とフェス時期ならではの少なさですね。新作はイーノ御大となっております、近々レビュー出来れば・・・。そして旧作として購入したBathsが素晴らしい!旧作なのでおそらくレビューを書くことはないでしょうが、これはお勧めですね。Washed Outを筆頭としたチルウェイヴな風情がありながら、ビートはFlying Lotusが引き合いに出されるぐらい緻密です。そのブレンド感に本当にセンスを感じました。是非。

9月はリリースラッシュですね。Death In Vegasが本当に楽しみすぎます。
[Review] I'm With You / Red Hot Chili Peppers
2011年 09月 03日 (土) 16:50 | 編集

" I'm With You " / Red Hot Chili Peppers

 10thアルバム。既に多くの人が思い入れたっぷりのレビューを書いている世界最強バンドについて、そこまで思い入れの無い私が語るというのはなんだか怖いのだけども書きたいので書こう。個人的には"Blood Sugar Sex Magik"は若さと成熟が頂点でクロスしてなおかつキャッチ―さも取り入れた至極の名盤だと思っているけど、"Californication"以降は曲毎にお気に入りはあるけどアルバムとしてバンドの姿勢としてそこまで面白くないという意見で。"Stadium Arcadium"に至っては発売当初は喜んで2枚ともリピートして聴いていたものの、次第にビッグバンドならではの横柄さが気になり始め退屈ささえも感じるようになってしまったという。
 とはいえやはり「ジョン・フルシアンテが脱退したレッチリ」には人並みに興味があって、ジョシュ・クリングホッファーを迎えて一体どんなサウンドに変わっているのか。結果から言えば、ジョンの抜けた穴を隠しきることはできないが、哀愁路線を突き進めテクニックと経験で着実にポップに仕上げた一枚になっているかと。隙間を絶妙に利用し枯れを演出しながらもキメるところではキメてきたジョンとは違い、ジョシュのプレイは実に堅実。エフェクトを加えたサウンドで新しい味付けを足しつつ、一方でリズム隊を裏方で支えるかのように控えめに弾いている。ギター以外の楽器もマルチに駆使する器用さで楽曲の幅を広げてはいるものの、「メンバー」になりきっていないようなまた逆にバンドにとっての異物にもなっていないようでまだまだ試運転感たっぷり。一方で盤石のリズム隊は今作でもその凄さを発揮していて、特にフリーのディスコティックなベースラインはバンドに瑞々しさをもたらしている。楽曲の根幹がフリーとアンソニーに委ねられていたようで、その意味ではフリーファンとっては涎物の一枚となっているのか。世間ではスルメ盤と言われているようだけども、個人的には「たこわさ盤」でいつも食べないけどたまに食べると美味しく、ちょっとツンとした個性があるという風に感じた。

( 2011 )

[注目リリース] 2011年9月
2011年 09月 02日 (金) 01:27 | 編集
フェスも終わり、下半期のリリースラッシュ突入です。個人的に楽しみなものが多いです。

≫ "[注目リリース] 2011年9月 " の続きを読む...
[Review] Sky Full of Holes / Fountains Of Wayne
2011年 09月 01日 (木) 18:16 | 編集

" Sky Full of Holes " / Fountains Of Wayne

 5thアルバム。ザ・ポップソング職人が帰ってきた。2ndからリリースには4年のブランクを(意図的ではないにせよ)設け続けていているが、間が空いても彼らに対する信頼は変わらない。数年ぶりに会った親友?居酒屋のほっけ焼き?例えはなんでもいいが、要は彼らが作る楽曲にはシーンの動きやトレンドとは関係のない普遍性と抗えない魅力がある。今作にも多分に漏れない。キラキラとした、だがしかし捻りのあるメロディー、頑張りすぎないヴォーカルと演奏。過剰な装飾をしないのにも関わらず説得力のある楽曲を作り続けているのには前述したように職人気質なところが見受けられ、これはこれで一本筋の通った凄みを感じる。さて今作の作風だが、打ち込みを導入して多少煌びやかであった前作とは打って変わって、アコースティックな響きとオールドロック風味に味付けされたものに。イントロのたまらんギターから彼ららしいコーラスへと突入する"The Summer Place"、絶妙な落ち着きと柔らかさを持つ名曲"Richie And Ruben"の他、カントリーや西海岸のような陽気さをまとった佳曲が並ぶ。リミッターを外したようなポップさや衝撃的な音像というのは無いけれども、ふとした時についついリピートしてしまう、そんなアルバム。やっぱり好きだなーこのバンド。

( 2011 )

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